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突然のこと

昔、うちの祖父母の家の倉庫に住み着いていた黒猫一家がいまして。
祖父が他界した直後くらいから、その一匹を祖母がずっと飼っていました。


その猫は人にまるでなつきません。
唯一エサをくれる祖母にだけなついて、僕らが半径2mに入ってきたら
全力でどこかへ逃げてしまいます。
どうやらよく他の猫にいじめられたりしていたようで、
人間でいうところの人間不信みたいな感じだったのかもしれません。


もう長い年月が過ぎ、黒猫一家がいた倉庫も今は更地になってしまいました。
祖母と黒猫の1人と1匹暮らしも長くなって、14~5年は経ったでしょうか。

猫の15歳といったら人間でいうと90歳のヨボヨボおばあちゃんです。
人間同様にボケてきます。車が乗り入れて来てもなかなか気付かず、
道路に寝っころがったまま気持ちよさそうに昼寝しているので、
もう少しで車に轢かれていたという場面が何度もありました。

でもよいこともありました。歳をとってのんびりした性格になって、
僕がかなり近づいても逃げなくなりました。手を伸ばしたら警戒されるけど。
祖母の家に入れないときは、祖母の家に向かう僕の後ろをついてきて、
僕が玄関を開けてもらっている間に家に入るようになりました。


そんな毎日がしばらく続いたある日のこと。




覚悟はしていたけれど、実際に起こってみると余りに唐突で
なんといえばいいのか分かりませんでした。

家の前で轢かれている猫の死骸が、
歳のせいで黒毛に茶や白が混じっていたので、うちの猫と分かりました。


僕にもやっと懐きだした頃でしたが、抱いたことは一度もありませんでした。
初めて僕がタオル越しに抱きかかえたときには彼女は亡骸でしたから。



何度も轢かれそうになっていたし、死んでホッとしたと母は言っていました。
自分も歳で面倒を見切れなかったから死んでよかったと祖母も言っていました。


でもね。本当に君が死んよかったなんて思っていないからね。
きっとまた日差しを避けて木陰やら花壇やらに隠れていると思っていました。
祖母は祖父が他界してからずっと君と一緒に暮らしていましたが、
これから本当にひとりで暮らすことになる祖母が弱ってしまわないか不安です。

長い間、お婆ちゃんのために、僕らのために生きていてくれてありがとう。
お疲れ様。そしてさようなら。冥福を祈ります。

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