最終話 「バラックの中の戦争」


この頃僕は思い出す、初めてエアブラシ塗装をした日のことを、終われなかったあの戦いを…
…コービィ、忘れないよ……

■ハードウェア編■
最終日徹夜でハードウェア作り。まずアメリカンテレのブリッジ。
プレートにアメリカンストラト同様のブロックタイプのサドルがのっています
…って、ギター詳しくない人は分かりませんよね。
サドルっていうのは、要は一本一本の弦が乗っているコマです。
左下に見える白っぽい四角がそれです。真ん中がプレート。

プレートは0.5mmプラ板を傷をつけたところで曲げて、補強に0.3mmプラ板を表から貼って、曲げた状態で安定するようにしています。
サドルの作り方ですが、まず2ミリプラ角棒をちょっとやすって
1.8mmくらいにします。フェンダーの弦ピッチは11ミリ、
1/6で1.83333…ミリです。

その1.8mmのブリッジに角度がついて見えるように斜めに彫りこんだ上で、
さらにその中央に0.5mmのBMCタガネで弦が出てくる溝を彫ります。
タガネはこういうところで本当に便利です。ホント助かります。
はい、ブリッジにサドルと市販のリベットをとりつけて、
針金でブリッジの曲げた部分とサドルを結びます。
本物はここにネジとバネがきます。
が、幅がせまくてバネが仕込めませんでした。

ついでにピックアップもちゃっちゃか作りました。ピックアップの形に切った
0.5mmプラ板の下にひとまわり小さい1.2mmのプラ板を貼り、
コイルが巻いてある感じにしようとしましたが、最後は分からなくなりました。
ピックアップのボールピース(鉄芯)は、太目の針金を刺しました。
開けた穴がちょっと大きくてキレイに並んでいません。
が、もうそんなこと言ってる余裕なし。
キャンディーアップルレッドのほうはブリッジがビグスビーです。
これがマジで厄介です。まずは割と簡単そうなプレートから。

「evergreen」社から出ているコの字形のプラ材を加工してブリッジを、
そこに丸プラ棒のコマ切れの真ん中に溝を切ったものを並べてサドルを
それぞれ作り、流し込み接着剤で固定しました。
この写真の状態の後、アメリカンテレと同じように
ブリッジとコマをつなぐ針金を刺しています。

プレートはただの0.5mmのプラ板。
はい、後回しにしていた難関のビグスビートレモロ。
実物はこんな構造になっています。

U字の間に二本の棒があって、後ろの棒に巻き付いている弦を、
前の棒が押さえています。可動するのは弦が巻いてある後ろの棒です。

U字の下の部分にある「F」マークとその周辺といい、
2本の棒をつなぐ緩やかな曲面といい、プラスチックを削って作ったら
とてもじゃないですが間に合わないでしょうね。
難しい造形のときはやはり写真の出番です。
写真を参考にビグスビーの棒の部分以外のアウトラインを
0.5ミリのプラ材で切り出します。ちょうどUの字のようになります。
U字の一番ネック側に1mmくらいのプラ棒を、ちょうど真ん中くらいに
2mmくらいのプラパイプを接着します。
プラ棒はそのまま前の棒に、プラパイプは棒を差し込む穴になります。
この段階で棒全体とパイプのてっぺんに、メンソレータムか何かを
綿棒で塗っておきましょう。
使っているプラ棒・プラパイプはevergreenのセットのものです
この棒とパイプの間、パイプより下の部分にポリパテをたっぷりと盛り、
盛ったポリパテにデザインナイフのキャップを押しつけます。

デザインナイフのキャップはポリエチレン…だと思うので、
いくら食いつきのいいフィニッシャーズのポリパテでも、
キレイに剥がれてくれる…はず!メンソレータム塗って使ったらもっと確実
僕は特に何もしませんでしたが。

この状態のまま硬化させます。
硬化しました。いい具合です。

フィニッシャーズのポリパテは硬化が結構早いので、20分くらい置いたら
作業できるくらいの硬さになります。
完全硬化しないうちに、底のU字に合わせて、U字の間の不要なポリパテを
プラパイプごとカットして(棒は残します。切っちゃだめ!)、他の部分も
写真を参考に成型していきます。
分かりづらいですかね?つまりこうします。
はい。こんな感じです。
Uの字の底板に乗っかっているポリパテを残して、あとを完全硬化前に
大体取り除いて、プラ棒は残して、プラパイプは底板に接着した部分だけ
残しておきます。パイプの上に乗ったポリパテのツノも折っておきます。
このへんはメンソレータム塗っていれば簡単に取れるはずです。

デザインナイフのキャップを押し付けた部分が、
キレイな二次曲面でつながっているのが分かるでしょうか?
上のものをさらに加工していきます。
まずU字の右側にはスプリングを受ける皿が来ますので、
これを市販の丸モールドを埋め込んで再現。
さらにFのエンブレムを作っていきます。

エンブレムの黒い部分の形に切った0.5mmプラ板に、
細切りにしたやはり0.5mmのプラ板を曲げて縁を作ります。
縁の高さを調整したら、トレモロの底のU字の板とエンブレムの縁の間に
大量の瞬間接着剤(高粘度でゼリー状でないもの)を流します。
高粘度のため、表面張力でU字と縁の間を接着剤が滑らかに結び、
エンブレム付近の難しい三次曲面が一発で出来ます。
いい具合につながるよう量を調整しつつ、いい具合のところで
瞬着硬化剤で固めましょう。

その際僕みたいに股間に硬化剤こぼしても
そっちはぜんぜん硬化しませんからね…下品で失礼!でも実話

はい、気を取り直して、エンブレムの「F」を彫りました。
めちゃ小さいです。画鋲がでかいわけじゃないです。
大きさ2mmくらい。

こういう細かいものをプラ板から彫るときは、
プラ材をマットに接着してしまったほうが手元が狂ったり折れたりしないです。
これはおすすめの方法。
エンブレムを貼り付けて、パイプがあったところに棒を刺して、
ビグスビーの具合をみています。いい感じなのでは?

やり方を間違えなければ、僕程度の技術しかなくても、
複雑なビグスビーを作れるもんなんだなと思いながら撮った写真。多分。

さらに刺した棒にトレモロアームをとりつけて、ネジのあるところに
市販のリベットを貼り付けていきます。
はい、やーっと両方のブリッジ完成!ビグスビーは大変でしたが、
こうやって出来上がってみるとそれっぽくていいですねーウヘヘ
とか思ってまた撮ったんでしょうねこの写真…。

でも、アメリカンテレの機能的なブリッジもとても見栄えがしますね。
精密さをアピールできる部分だけに、割と納得いく出来で満足。
そして忘れていたフロントピックアップ。
バーニアノズルの形が似ていたので、これをもとに作ります。

まず、ノズルの中が空洞なので、たっぷり瞬間接着剤を入れて固めます
それをカッティングマットに接着して、あとはひたすら削る!
100円SHOPの棒ヤスリが手に慣れてしまって、大変扱いやすいです笑。
はい、出来ました。ピックガードに合わせてみます。

ディアボロのせいで写真が残っていませんが、
このあとコントロール系とネックジョイントのプレートを作った時点で
残り6時間とかで、やむなくペグ等は諦めました。弦張りたかった…

ぐやぢぃ
さーてハードウェアの塗装をあわててしましょう。まずは下塗り。

全体に黒、そして銀と塗るわけですが、時間短縮のために一工夫して、
黒に瓶入りのサーフェイサーを混ぜて、つや消しの灰色気味の黒を作り
これを下塗り兼リアピックアップのボビンの色、そしてシルバーは
上からラッカークリアを吹けないかわり光沢が素敵なガンダムマーカーの
メッキシルバーを塗料皿に出して溶剤で溶いてエアブラシ塗装。
こんな感じです。
なかなかの光沢してるでしょ?今後もこれは使えるいい方法ですね。

さて。乾くまでの時間もおしいのでもうひと作業。
フレット打ちです。
造花用ワイヤーの26番くらいを切っては貼り、切っては貼り。

でもこれ、一番最初のときにシーラー塗っちゃったから、
ボンドとかじゃくっつかないし、瞬間接着剤も硬化剤が使えないし、
修正もきかないし…シーラーの前に接着しとくべきでした。

おかげでヨレヨレの音痴そうなフレットになっちまいました。
せっかくキレイだった指板もでこぼこできたなーくなっちゃったし。
ペグもナットもつけれなかったし、ネックまわりは残念ポイントが多いです
硬化剤が使えないので、密集していて接着剤が固まる前に次を貼ったら
触ってしまってずれそうだった(というか触って何度かやりなおした)ので
ハイポジションは一個飛ばしで。
待ち時間にもうひと作業。

虫ピンをボディエンドとボディの左肩に打って、ストラップピンに見立てます。
アウトプットジャックもそういや作れなかった…反省。ああ・・・。
反省をいくらしても締め切りはじわじわやってきます。

傷がつきにくいところで塗装の乾いたハードウェアを接着していきます。
そしてフレットを打ったネックも接着。

こんなよたよたでも、全部が形になってくるとワクワクしてしまうもんです。

というかワクワクしながら撮ったんでしょうね。これ。(こればっかり)

最後にもうひと手間、ピックガードにリベットを打っていきました。
と、いうわけで完成!
このあと超特急で手紙書いて、箱に詰めて送らせていただきました。

以下、名前は伏せさせて頂きますが、
今回このギターをお贈りするにあたってお世話になった方々へ
簡単ながらお礼をさせて頂きます。

O夫妻、この度はご結婚おめでとうございます。
そちらには無事届いたでしょうか?この状態のものが
壊れずに届いたでしょうか?それだけが心配です。
アフターサービス(もしくは続きの製作)はお任せください笑

Y先輩、このミニチュアギターをO夫妻に贈る場を作って下さって
有難う御座いました。これが進行の助けになったなら幸いですし、
画像とはいえ多くの人に見てもらえたことも嬉しく思います。

W君、前日までよたよたですいませんでした。l
受け取り、そして夫妻への受け渡し、本当に有難うございます。
君がいなかったらあと一日前に完成させなければならず、
ここまでは進まずにきっと後悔していました。

そしてこのヨタヨタな製作記を最後まで見てくれたみなさん、
大変ありがとうございます。面白かった、つまらなかった、
ワケがわからなかった、用語の説明をしてほしい等は
BBSかブログのコメントへ!

それでは下から完成品ギャラリーへどうぞ。

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